setohimaNote

感情でネタを思いつき、論理で記事を書き上げる、暇なせとのノートブック。セトヒマノート。 https://note.com/setohima から記事を移行しました。

Googleの検索結果が巧妙な手法で"汚染"されている話

さーて、今日もヘビィボウガン(※)についてGoogleで調べるか!
さっそく良さそうなサイトがあったぞー!(ポチー)

スクリーンショット_2020-10-12_20_15_19

(※)ヘビィボウガン:弾が出て殺す武器。


えっ……何このサイト?iPhone11が当たる?(今使ってるけど)

スクリーンショット_2020-10-12_20_19_34


オイオイオイもうすぐオファーの残り時間が無くなっちまう!(今使ってるけど)早く入力しないと!!

スクリーンショット 2020-10-12 20.26.32


……この記事を見つけて読んでいらっしゃるような皆さんであれば、さすがに騙されませんよね?

ということで今回は、最近やけにGoogle検索に増えている迷惑なフィッシングサイトについての話をします。


偽装サイトが検索サイトの検索結果を侵食している

 アイキャッチ部分で軽く触れましたが、近頃のGoogleの検索結果が明らかにおかしくなっています

 例えばモンスターハンターというゲームに関係する、『ヘビィボウガン 徹甲榴弾』という単語の組み合わせで検索をかけると、検索結果1ページ目に表示される5サイトのうち2サイトが、さらには検索結果2ページ目の10サイトのうち7サイト『年間ビジターアンケート』もしくはそれに類するようなサイトへ強制的に移動するものとなってしまっています。

スクリーンショット_2020-10-12_20_40_40

他の方が検索しても同じ結果になるのかは不明ですが、少なくとも私の検索結果の2ページ目は画像の通りです。

 ちなみに私が調べた限りでは、Yahoo! Japanでもビジターアンケートのようなサイトへ移動させられてしまう検索結果が表示されることを確認しており、他の検索サイトでも似たような現象が発生している可能性があります。
 しかし、本記事内では混乱を避けるために、Googleにおける検索結果を中心に触れていくものとします。


ゲーム以外の検索結果も侵食されている

 先の例ではあくまで『ゲームに関する単語』の検索結果でした。しかし、私の周囲の方の意見を伺ってみると、どうやらゲーム以外の単語を用いた検索でも似たようなことが起きているようです。

 私のTwitterアカウントでアンケートを取っているのですが、この記事を投稿した時点で『ある』の3択のうちいずれかを選んだ方が49%を占めています。さらには『ゲーム以外の検索結果でも見た』を選んだ方は28%にも達しています。

 Google検索依存症の自分にとっては『ない/Google検索を使っていない』を選んだ方が約51%と半数以上になっている事実にも大変驚いてnote記事を書きたくなっているのですが、その話はまた別の機会にします。

 投票数は記事執筆時点で300票程度であるうえ匿名かつ同一人物が複数アカウントで回答可能なため『信頼できる投票結果』であるかは怪しい所ですが、それを抜きにしても約4人に1人が直近2ヶ月程度で年間ビジターアンケートの検索結果に遭遇したことがあるという事実は、検索エンジンとしてのGoogleに対するこれまでの信頼を揺るがす由々しき事態だと感じています。


なぜこの問題が深刻か①: 単純に『検索の迷惑』

 この問題の何が深刻かといえば、検索を利用している人にとって必要のない検索結果が増えてしまい、本当に欲しい情報が見つけられなくなってしまうことにあります。

 特に日頃から業務や学業で検索を多用していて、自分がよく関わる分野の検索結果の半数以上が『ビジターアンケート』に染まっていたら……と思うと、たまったものではありません。その状況下で愚直に片っ端から各サイトを見ていったとすると、単純計算で今までの2倍の時間を検索に費やすことになってしまいます。


なぜこの問題が深刻か②: 手口を知らない利用者が個人情報を抜かれてしまう

 この記事のアイキャッチ部分では件のアンケートサイトから移動できるiPhoneプレゼントの画面で何も入力しませんでしたが、もしも入力していたとしたらどうなってしまったのでしょうか……?

 実はすでに、それを確かめてくださっている方の記事が存在しています。

【最新】危険「2020 年間ビジターアンケート」は詐欺! 実際最後までやってみた! 「2020 年間ビジターアンケート」というフィッシング詐欺サイトで、アンケートに答えたらどうなるか試してみた。詐欺師の巧妙 otona-life.com
 そして今度は、「ONLY251.26¥」(たった251円)でiPhone 11 Proを買えるという画面が表示される。ここでもクレカ情報を入力させられるが、正しく入力して「MAKE A PAYMENT」を押してもエラーとなる。実はこのエラーが永久に繰り返され、一人から何枚ものクレカ情報を盗み取るようになっているのだ。恐ろしい!

 実はこのフィッシング詐欺は「100円で購入できる」というのがポイントだった。画面を先に進めると100円を支払うためにクレカ情報の入力画面が表示されるのである。なかには「100円でiPhone 11 PROが買えるチャンス!」と思い込んでクレカ情報を入力しまう人がいるかもしれない。だが、最後は「エラー画面」が表示されるだけだ。クレカ情報が抜き取られたうえに、何ももらえないのである。

(引用元:OTONA LIFE 『【最新】危険「2020 年間ビジターアンケート」は詐欺! 実際最後までやってみた!』 植村照明/フリーライター https://otona-life.com/2019/06/19/15086/2/ 2020年10月12日閲覧)

 上記の引用の通り、わざとエラーを表示させつつ1人から複数のクレジットカード情報を盗もうとしているサイトである可能性が非常に高いことがわかります。記事内ではサイトを撮影したスクリーンショット画像を用いて分かりやすく紹介されているので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。

 ここで入力したクレジットカードがすぐiPhoneの決済に利用されることは無さそうですが、入力した時点でインターネット上に送信されて誰かが受け取っていることは間違いありません。さらに、そこから見知らぬ誰かにクレジットカード情報を横流しされたり不正利用されてしまう可能性があることも否定できません。

 そういった可能性を無くすためにも、こういった詐欺サイトが検索結果に蔓延っている現状には何らかの対策をしなくてはなりません。


問題の根本を断ち切るのはGoogle側でも難しい

 この問題を手っ取り早く解決する(検索結果に『ビジターアンケート』へ飛ばすサイトが表示されないようにする)には、Google側にそういったサイトを表示させないような検索結果取得アルゴリズムを組んでもらう必要があるでしょう。
 ですが、そう簡単にはいかないだろう、と素人エンジニアの私すらも感じています。

 なぜかというと、『ビジターアンケート』が検索結果に表示させているタイトルやサイト概要は、Googleの検索結果で上位に載るようなサイトからほぼ丸パクリしているものが大半だからです。

スクリーンショット_2020-10-12_22_02_09

 検索結果に出てきた『ビジターアンケート』の概要欄に書かれていたサイト概要の大半をコピーしてそのままGoogle検索にかけてみると、コピー元と思われるサイトが検索結果に表示されてしまった。

 私自身はGoogleの検索アルゴリズムやらSEO(Search Engine Optimization: 検索エンジン最適化)といった分野には詳しくないのですが、Googleの検索結果は『サイト内の情報の質』だけでなく『サイトの見た目が適切かどうか』や『第三者から信頼されているかどうか』といった点で評価しているのだろうと(私が勝手に)解釈しています。
 そして本来はそういった一定の基準を高いレベルで満たしているサイトが、検索結果の1ページ目に載るようなサイトとして表示されるはずです。

 しかし、『ビジターアンケート』を仕込んだ犯人はこのロジックを逆手に取り、『Googleが検索結果として評価する時点では検索結果の1ページ目に載るような質・見た目・信頼性のサイトだが、実際にアクセスするとビジターアンケートへと移動させてしまうだけのサイト』を既存の高品質なサイトを複製したものから作り上げたのだと思います。

無題のプレゼンテーション

 検索結果から直接飛べるページの内部データにはパクリ元のデータが存在しているのだろうけど、それを閲覧者に見えるように表示させていない。それに加えて、そのデータを表示させるよりも早く内部のプログラムでビジターアンケートに向かって強制的にページを移動させてしまうイメージ。
 ※ 筆者の憶測であり、実際の手口とは異なる可能性があります
 検索結果の概要に載る部分が他サイトの丸パクリなのに『質が高い(他サイトのパクリではなく、専門的な情報を扱っている)サイト』とビジターアンケートが評価されて検索上位に載ってしまっている現状が中々歪な気もしますが……素人が不用意に踏み込める議論ではなさそうです。

 もっと分かりやすく言えば、Googleが現状の検索結果からビジターアンケートを駆逐しようとすると、既存の検索上位のサイトすらも駆逐されてしまう可能性が高い状態なのです。

 さらに厄介なのは、検索キーワードによってはビジターアンケートに汚染されていない検索結果も存在するという点です。
 この事実がある以上、Googleとしては検索サイトとしての信頼性を維持するべく上位の検索結果に影響を与えずにビジターアンケートを駆逐する手法を取らざるを得ないでしょうが、それを実現するアルゴリズムを組むのは容易い道ではなさそうです……。


 なお、他のGoogle側が抱えている(かもしれない)悩みとして
 『ビジターアンケートは無数のドメイン(インターネット上の住所のようなもの)を取得し無数のサイトを公開しているため、特定のURLを指定してブロックする手法が取りづらい
 という点にも詳しく触れようと思いましたが、長くなるためここでは割愛させて頂きます。とりあえず『URLを指定してブロックするのはキリがない』と思っていただければOKです。


検索サイトの利用者にできること

 Googleの検索結果の一部が"汚染"されていますが、それがいつ解決するかは分かりません。そのため、しばらくは検索サイトを利用する我々が自衛を行う必要があります。

 そのため、今からでも行えるような対策の手段をいくつか紹介します。

対策①:汚染された検索結果を見分けるのは割と簡単

スクリーンショット_2020-10-12_23_15_59

 実は『ビジターアンケート』に飛ばそうとするサイトにはいくつか特徴があります。

 1つは、各サイトのタイトルの左上に表示されるURLの一部です。一般的なサイトであれば、利用者に覚えてもらいやすくするために英単語や日本語のローマ字読みなど、何かしら意味のある文字の組み合わせでURLを作成することが一般的です。
 対して、ビジターアンケートはおそらくプログラムによって自動生成されているからか、URLの一部が意味のある文字の組み合わせになっていないことが大半です。この違いである程度は見極めることができます。

 もう1つはレビュー用の星マークや得票数の有無です。ビジターアンケート側はどういう理屈か分かりませんが、サイトの概要が何かを評価している内容でないのにもかかわらずレビュー用の星マークや得票数が表示されているものがほとんとです。

 基本的には上記の2つの両方に当てはまるサイトを避けつつ検索結果を調べていけば、どうにか欲しい情報を見つけることができるでしょう。

対策②:見つけ次第片っ端から非表示にする

 次の方法は、対策①によって判別したビジターアンケートを検索結果から表示させなくしたりGoogleに報告することで取り除いてもらう方法です。

 検索結果から表示させなくするためには、PCであればブラウザの拡張機能を、スマートフォン等であればGoogleが提供しているカスタム検索機能を利用することになります。詳しくは別の方が記事を書いていらっしゃる(外部サイト『ガジェットメモ』内記事はこちら)ので、そちらを参考にしてください。

 また、Googleに検索結果の問題についてのフィードバックレポートを送信する(Google検索ヘルプサイト内記事はこちら)こともできます。

 しかし、これらの方法はいずれも特定のURLにしか対応できないため、今回のビジターアンケートのように無数のURLを持つ相手に対しては特効薬とならず、キリがなくなってしまうのも事実です。個人で対応するには長く、手間のかかる戦いになってしまうかもしれません……。

対策③:移住先を見つける

 もしも今使っている検索サイトが汚染されていて、なおかつそこまで思い入れがないのであれば、ほとぼりが冷めるまでまだ汚染されていない別のサイトを主軸に利用していくのも1つの案でしょう。

 筆者が確認した限りでは、マイクロソフトの運営するMSN Japanの検索サイトでは今の所"汚染"は確認できませんでした。ただ、GoogleYahoo! Japanと比較すると、これまでとは検索結果の内容や質が変わるため使いづらく感じてしまうこともあるかもしれません。また、今後新たに"汚染"されてしまう可能性もあります。

 いっそのこと、情報収集を行う手段を検索サイトから別のものに切り替えてしまうのも手かもしれません。
 例えばTwitterであれば、誰かが記事やWebサイトをおすすめしているツイートから欲しい情報を見つけ出せることもあるでしょう。

 ただし、そういった別の情報源もまた、Googleなどの検索サイトとは違った意味で人間によって作られた検索結果であり、人間の思惑が混在する検索結果でもあることを忘れてはいけません。


新たな調べ方・使い方を考えるきっかけに

 ともあれ、インターネットの中も外も関係なく、リスクを避けるための新しい行動様式が求められる時代に移り変わりつつあるのは間違いありません。

 こんな時だからこそ、今一度自分なりに情報との向き合い方について考えてみてはいかがでしょうか。