setohimaNote

感情でネタを思いつき、論理で記事を書き上げる、暇なせとのノートブック。セトヒマノート。 https://note.com/setohima から記事を移行しました。

無計画でVR機器を買ったら無事にVRChat沼に引きずり込まれた話

 私の中でVRが生活の一部になってから、早くも一か月が過ぎていた。
 それまでは微塵もVRの世界のことを知らなかったし、何なら最近流行りのVTuberという存在を遠目に見やりながら自分がやりたいゲームに集中しているような程度の人間だったのだ。

 そんな人間が、どうして急にVR機器に手を出して、そして一瞬でVRChatに毎日のようにログインしたりUnityやBlenderの勉強を始めるようになってしまったのだろうか。

 ちょっと曖昧な部分もあるが、そのきっかけを振り返りながら、今なら言える『自分がやりたかったこと』=『今の自分がVRを通じてできていること』について考えていく。

 

どうしてVR機器に手を出してしまったのか

 昔からVRゲームや、VRで動画を見るといった辺りには興味を持っていた。しかし親の脛をかじりながらの遠距離通学だったためアルバイトをする時間もなく、自由に使える金もなかった。すなわち、VR機器を買うなんて夢のまた夢の話だったのだ。

 

 しかし社会人になり、一人暮らしも始め、時間とお金にほんの少しの自由が生まれた。そしてある時無性にVR機器に手を出したくなった私は、安価に高品質なVRが体験できると世間の注目を集めていたOculus Quest2と、それまで持っていなかったゲーミングPCを併せて一気に買ってしまったのだ。

 

 ……とは言ったものの、実際にQuest2で何をして遊ぶかは全く決めていなかった。それこそ、Quest2で遊ぶよりも先に日課のリングフィットを始めるレベルであり、VRへの激しいモチベーションに沸き立っているわけではなかったのだ。

※上記アーカイブは非公開設定のはずです

 

 それからやっと、FacebookアカウントとQuest2を連携させ、PCとQuest2をOculus Linkで連携させ、Quest2に手を出し始めたのだ。

 

 そう、手を出し始めた。そしてそれからわずか4時間後、気がつけばいつの間にかVRChatの世界でkawaiiアバター、もとい優しい人々に囲まれてナデナデされ、結果VRChat沼に堕ちてしまっていたのだ。

※現在のVRChatIDは "せと。/setohima" に変わっています

 

 今思い返すと、そもそもどうして、何がきっかけでVRChatに手を出したのかが全く思い出せない。この日にブラウザで閲覧していたページの履歴を確認しても、『リングフィット配信のために使用していたツイキャス』から『VRChatについて具体的に調べている』までの間にほかのサイトを全く開いていないのだ。

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 わずか一ヶ月しか経っていないのに推測になってしまうが、おそらくQuest2をPCに接続した私はQuest LinkのPC側のアプリケーション一覧を適当に眺める中で偶然VRChatを見つけ、軽い気持ちでVRChatをインストールし接続し始めたのではないだろうか。
 今思えばそれは(沼に堕ちる意味で)愚行であったとも、(めっちゃハマった意味で)英断であったとも言える。

 

日本語圏VRChatにおける『善意の連鎖』

 VRChatには、有志の日本ユーザーが作成した『日本人向けのVRChatに関する操作やVRChatにおける文化について学べる場所』が存在する。

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 これはVRChat公式ではなく、あくまでも有志が作成した場所なのだ。そもそもVRChatは日本で作られたゲームではなく、ゲーム内のUIが全て英語だ。そこで、主に英語がわからない日本人向けに作成されたのがこのワールドだ。

 しかし、VRChatにおける日本人の特徴はこれに留まらない。なんと、何らかの見返りを求めることもなく、ただ善意で先輩プレイヤーが新人プレイヤーに対して操作や文化についての詳しい説明を行うという文化が定着しつつあるのだ。先輩プレイヤー達がワールド内に書かれている内容を口頭で説明したり実演して見せたりすることで、新人プレイヤーの理解をより深めるという意図があるのだろう。

 ちなみに、先輩プレイヤーの中でよく新人プレイヤーに教える役回りを買って出ることが多い方々に「どうして無償でそういったことを続けているのか」と聞いたところ、「自分が新人の頃にそういうことをしてもらったから」と話す方が多かった。
 このように、あるプレイヤーの善意から多くのプレイヤーへと善意が連鎖していることが伺える。この文化は日本のVRChatにおける大きな特徴と言えるだろう。

※注:あくまでも先輩プレイヤーは時間が空いていたり暇だったりする時に、彼らの善意でそういった役回りを率先して受けている傾向にある、というだけであり、新人プレイヤー全員に対して漏れなくそういったサービスが提供されているわけではないことに注意してほしい。
 そういったプレイヤーが居る可能性が高い時間帯はある(21時〜22時頃)が、基本的に会えたらラッキーぐらいに考えておくべきだろう。

 

 そして私も、新人プレイヤーとしてVRChatに足を踏み入れたその日に先輩プレイヤーから直接ご指導を頂いた者の1人だった。

 これまでの10年程度で買い切りのゲームだけでなく、PC向けに提供されていた基本無料型MMORPGの類で遊ぶことも多かった私だが、そういった場で先輩プレイヤーから直々にゲームについて教えてもらえるような状況に遭遇したことは過去に一度もなかった。
 それどころか、そういったゲームでは他のプレイヤーと直接チャット等で交流することはほとんど無く、ギルドなどの集団に属して初めて他プレイヤーと交流を持つことができる。というのが私の中での常識だった。

 それだけに、VRChatで積極的に他プレイヤーから積極的に、チャットではなくボイスチャットでガンガン話しかけられる状況というのは自分にとっては大きなカルチャーショックだった。若干恐怖を覚えたレベルだ。

 しかもその時の私は、(当時)Quest2をPCに繋いだ際に発生しやすい不具合のせいでマイクが使えなかったのにも関わらず、先輩プレイヤー達はそそれに配慮しつつ、懇切丁寧に操作方法などについて説明して下さったのだ。こちらはコントローラーを使用して身振り手振りで意思を伝えることしかできなかったが、それでも意思疎通を図ることができた。

 そして説明を終え、いくつかのワールドへ散歩に連れて行ってもらいもした。行き先のワールドで操作を間違えて迷子になってしまっても優しく応対してくださったり。かと思えばkawaiiアバターでこちらをナデナデしてくれる。なんだ、ここが楽園(エデン)だったのか。

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 残念ながら悦に浸りすぎたせいでナデナデされた時の写真は撮影できていないが、この画像のようにkawaiiちびっこアバターから傘を差し出されるだけでも人間(特に男性)は『VRChatやべえ』との確信に至ってしまうのである。

 

 そういった周囲のプレイヤーの暖かさを感じることができたうえに、連れて行ってもらった先で観た景色は、過去に見たことがあるもので構成されているはずなのに見たことのないような風景を描き出しており、私の心を掴むには有り余るくらいのものだったのだ。

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VRChatは私の何を満たしてくれたか

 その後の約1ヶ月をVRChatに費やした結果、VRChatが私のどんな欲求に応えてくれたかについて、駆け足で紹介しよう。

 

 まずは、承認欲求を満たしてくれた。

 少しVRChatのことが理解できるようになった辺りで、ちょっと背伸びして無料で配布されているアバターの着ている服などの色を自分好みに改変してみたり、アクセサリーをつけて自分らしさを出してみたりした。そうして生まれた些細な変化でも、知り合い同士や友達同士で褒め合えると、ちょっと嬉しくなってしまった
 正直な所、女心には疎い自信がある。しかしそんな自分でもVRChatのおかげで、『自身の見た目』にお金と時間を費やす人々の気持ちの片鱗を理解できるようになった気がしている。

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 様々なアバターで集まってだらだらお話をしたり、集合写真を撮るだけの気軽なイベントもあるのだ。
 ちなみにこの頃の私がまだ女心を理解していなかったことは、画像の左側を見るとお分かり頂けるだろう。

 

 次に、自分自身の飽きっぽさを満たしてくれている。

 私は今まで書いてきた記事の大半がモンスターハンター:ワールド関係の内容であるくらいにはそのゲームにのめり込んでいたが、それはあくまでも例外中の例外だ。大半のゲームはストーリーラインをクリアした辺りで放り出すか、PS4で言うトロフィー全て揃えた辺りで手放すような、飽き性寄りの人間なのだ。

 それに対し、VRChatでは製作者がいる限り無限に世界や遊び、姿かたち、雰囲気、交流の場などの多種多様なものが提供され続ける。もちろんずっと同じものでも楽しめないことはないが、やはり毎日違う体験をしても追いつかないぐらいに遊べるのはとてもありがたいことだった。

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 ある日は酒場で酒を飲み交わし、次の日は美しい風景を眺めながら友人と語り合い、その次の日はロケットが発射される瞬間に立ち会ったり、さらに次の日はホラーゲームのような世界で怪物から逃げ回る。
 作り手がいる限り、あまりにも多種多様な体験ができてしまうのだ。

 VRChatでは常に誰かの作品が、誰かの想いが、他の誰かの支えになったり、発想の燃料になったり、笑いの種になったりしている。そしていつしか、どのプレイヤーも自分なりの創作に手を出し始めるようになるのだろう。

 

 最後に、自分に正直であることを満たしてもらえた。

 これはコミュニケーションにおける誠実さ等と言うよりも、自分の代理人とも言える3Dアバターを通して自分自身を他人に伝える時の話だ。
 自分の性癖に向き合えた。自分の下半身に従ってアバターを選べた。男子諸君なら1度は抱くであろうTS願望を擬似的に叶えられた(見た目だけなので内面的には努力が必要だが)。うちの子かわいい。そういったことだけでも、日々を諦めずに生き抜ける活力になり得てしまう。今日も生きのびてえらい。

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 そういった訳で様々な理由があり、私はすっかりVRChatの虜になってしまっているのだ。

 VRの世界は未だ敷居が高く、VR機器だけでなくやや高性能なゲーム用PCを所持していないと足を踏み入れられない。
 しかし、実はVRChatについては、ある程度の性能を持つPCさえあればVR機器がなくても遊ぶことができる。VR機器を利用する場合よりもゲーム中の自己表現の手段は減ってしまうが、ボイスチャットで他人と交流することはできるし、たくさんの人々が作成した様々な世界に触れることも十分に可能なのだ。
 また、VR機器についても最近は安価な機種が発売され、VR初心者ユーザーでも手が出しやすくなっている。オススメは、この記事でも紹介したOculus Quest2だ。

 もしこれを読んでいる貴方がまだVRの世界に足を踏み入れたことがないのであれば、まずはPCからでも、あわよくばVR機器を買い、未だ見たことがない交流の場と世界を目の当たりにしてみては如何だろうか。

 その時は、貴方も私と同じように、貴方の中の何かが大きく変化していくであろうということを約束しよう。

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