『一曲をたくさん聞いて飽きる』を繰り返す人でも音楽サブスクリプションは楽しめる
皆さんは『音楽のサブスクリプションサービス』と聞くと、どんな印象を思い浮かべるだろうか?
ほとんどのサービスは『お金を払えば無数の曲が聴き放題』となるサービスだ。そのため、『同じ曲を聞いているよりもたくさんの種類の曲を聴いていたい』とか、『たくさんの種類の曲を聴かないと元が取れない』などと考える方が多いのではないだろうか。
実際、たった数曲の楽曲をループし続けるだけなら、各種オンラインストア上で1曲数百円で販売されている楽曲を購入して聴き続けるほうがコストパフォーマンスにも優れているだろう。
そして私も、約1年前まではそう考えて音楽サブスクリプションサービスに手を出していなかったのだ。
筆者の音楽鑑賞センスについて
実は私は、音楽鑑賞については『めちゃくちゃ同じ曲を聴きまくっては飽きる』を繰り返し続けている男だ。具体的には、Last.fmというサービスを利用して溜め込んだ私の音楽鑑賞履歴を見て頂けるとお分かり頂けるだろう。
私が本格的にlast.fmというサービスを使い始めてから今日までの再生回数が約12,500回で、そのうち聴いた回数が多い楽曲の上位11曲の再生回数が合計で約3,000回なのだ。
こういった情報は他人と比較したことがないのが私が普通なのか、それともおかしいのか分かりづらいかもしれないため、もう少し詳細な情報をお伝えしよう。
例えば、ある日発売されたシングルの楽曲を極端に流し続けるのが数日続いたりする。
かと思えば、話題になった曲を永遠にループし始めたり、急に懐かしい曲のことを思い出してひたすら流し続けることもある。
ちなみに『ゾンビランドDEMPA!!』という曲を例に挙げると、1周で5分14秒かかり、上記の画像によればそれを127周している。ざっくり計算すると 5.23分 * 127周 = 664.21分 聴き続けていたことになる。
……えっ? 1日に11時間???
もちろん、この現象は私にとって毎日のように起きているものではない。ただ、先述のように推しのアーティストが新曲を出したり、ネット上の流行の影響を受けたり、もしくは急にふと思い出したりと、何かしらの理由があって同じ楽曲を聴き続けてしまうということが定期的に起こるのだ。
しかし、そういったことは、実はLast.fmを始めるよりも以前に比べると少なっくなってきている。理由はおそらく、Last.fmを始めたのとほぼ同時期にSpotifyの有料サブスクリプションを契約し始めたからだ。
なぜSpotifyを使い始めたのか
それまで買い切りの音楽を楽しんでいたのに、突然サブスクリプションサービスを契約し始めた理由。それは、新たな『依存先』を簡単に見つけたかったから、と言える。
結局のところ私の本質は飽き性なので、飽きたらすぐに次の依存先となる楽曲を探して回る必要がある。とはいえ、学生時代を終え社会人生活を始める中で、ネット上で自主的に音楽を聴いて依存先を探し回ること自体が手間だと感じられるようになってしまってきていたのだ。
そこで、『サブスクリプションサービスを契約していつも通り楽曲を聞き流していれば、レコメンド機能で勝手に依存先が見つかるのではないか』と考えたのがきっかけだった。
……というのはやや建前で、本音としては学生時代に聴いていたアーティストが偏りすぎて一般世間の流行とかけ離れた音楽知識しかなかった(いわゆる『ニコニコ動画』ベース)ので、いい加減に一般のトレンドも追うようにしておきたいと思い始めていたことの影響の方が大きいかもしれない。
推し曲よりも人気の曲があると対抗心で聞きたくなる
Spotifyには、ただ楽曲を聴くだけでなく、新たな楽曲を発見しやすくしてくれるための様々な仕掛けが用意されている。
その1つが、アーティストごとに用意されたページだ。ここでは、Spotifyの全ユーザーがそのアーティストの楽曲を合計で何回再生したかとか、今ユーザーに人気の楽曲はどれだ、といったような情報が表示される。
突然だが、私の推しアーティストの1人にヒゲドライバーさんという方がいらっしゃる。
太古の昔(オタク特有の誇張表現)にニコニコ動画などで公開された "ukigumo" という楽曲を利用したPV "DDDot" を観てその楽曲に興味を持ち、当時の同人CDである『コスモドライバー∞UP』というCDが人生で初めて購入したCDになったくらいにはお気に入りのアーティストだ。
そしてもちろん、私の中ではヒゲドライバーさんの推し楽曲も当然 "ukigumo" だったのだ。ただ、その後はお約束の飽き性が発動しヒゲドライバーさんの楽曲をほとんど追えていなかった。『いつの間にアニメのOPとかEDを担当していらっしゃったんですか!?』というレベルだ。
話を戻そう。それでは、ヒゲドライバーさんのSpotifyにおけるアーティストページがどのように表示されているのかと言えば…
なんと "ukigumo" は1位ではなく2位だったのだ。いや、初発表から11年が経過しようとしているukigumoが2位というのも勿論素晴らしいことではあるのだが。
このように、自分の中で名曲だと思っている曲を作ったアーティストのページを見てその曲が1位ではなかった時の衝撃はなかなかに筆舌に尽くし難いものがある。
とはいえ「だったら1位もどんな楽曲なのか聞いてやろう」と軽い気持ち聞き流し始め、気がつけばハマっていたりする。といったように、普段ずっと聞き流している楽曲だけでも様々な発見が得られるのは、多くのユーザーと再生回数を共有しているSpotifyの特徴の1つだろう。
好きな曲ばかり聞いていてもレコメンドは最適解を示す
同じ曲ばかり聞き流す比率がやや高い私だが、それでもたまには気分転換に別の曲を聞きたくなったり、複数の楽曲をだらだらと聞き流したくなってしまう時もある。
そんな時に、やはり『過去に聴いた楽曲を元にユーザーが新たにハマってくれそうな楽曲を教えてくれる』というレコメンド機能が役に立つのだ。
先程も軽く触れたが、私は『ニコニコ動画』の音MADに使われるような楽曲だったり、やや激しめのオリジナルボーカロイド楽曲や東方アレンジ楽曲を主食として学生時代を過ごしてきた。
しかしそんな私でも、Spotifyで聞けるボカロ楽曲やアニソンを中心に楽曲を聞き流したり、好みの楽曲に「いいね」を付けたりするのを毎日続けているだけで、Spotifyが日替わりで私向けのおすすめプレイリストを自動で作成してくれるようになるのだ。その中にはもちろん、私がまだ聴いたことがない曲も含まれている。
その結果、"ヒトリエ" や "PENGUIN RESEARCH" 、"東京スカイパラダイスオーケストラ" といったアーティストを知ることができたし、それ以外にも毎日さまざまな楽曲に触れられるようになったのだ。
音楽を聴いて『いいね』する、たったそれだけで新たな好みのアーティストや楽曲を知ることができる。
これは実質的に『自分で探す手間』を省けていることになるわけであり、そういった時間を短縮するという点にお金を出していると考えると、サブスクリプションがコスパの悪い買い物だとはだんだん思えなくなってくるだろう。
ちなみにレコメンド機能は、大昔に聞いたことがあるが記憶から抜け落ちてしまっていた曲すらも思い出させてくれることがある。
使い込めば使い込むほどこちらの好みをピンポイントで捕捉するようになるというのは本当らしく、403というアーティストの "Southern Cross" がDiscovery Weeklyに出現した時は我が目を疑い、そして感動したものだ。
なぜかというとこの楽曲は、ニコニコ動画よりもさらに前、いわゆるFlashを用いて作成されたとある動画に使用されていた楽曲であり、私が当時めちゃくちゃハマった楽曲だったのだ。そもそもこの曲が配信されていたことにも驚いたが、これを紹介してきたSpotifyのレコメンド精度にはもはや頭が上がらないのだ。
依存先を探す時間を買うのも悪くない
以上のように、Spotifyを始めた私の音楽生活はより充実したものになり、他人より流す曲のバリエーションこそ少ないかもしれないが高い満足感を得ることができているのだ。
昔の私は「一般のアーティストの曲は自分には合わない」「ボカロや東方アレンジに似た曲調の曲はニコニコにしかない」などと自分の中で勝手な偏見を抱いてすらいたものだが、今では意外とそういう曲調が一般アーティストの間にも広まっていることを知ったし、新たな依存先を見つけては曲を垂れ流す生活も捗りつつある。
私のような『一曲に依存しがちなタイプ』の方が世の中にどれだけいらっしゃるかは定かではないが、もしこれを読んでいる貴方がそうなのであれば、是非ともサブスクリプションサービスを利用して自らの音楽の世界を大きく広げることに挑戦してみてはいかがだろうか。
(余談)
この記事を書きながらTwitter上のフォロワー諸氏に『私の感覚が普通かどうか』を間接的に質問してみたところ、半数以上の方に『やべーやつ』だとの回答を頂いた。私が長らく自分自身に抱いていた感覚はあながち間違いではなかったらしい。